17、黒人のカントリーミュージック

今年、2020年54回CMAアワード表彰式は11月11日に行われる。
楽しみだ。アワードの項で書いたがイベントのホストはダリウス・ルッカ―Darius Ruckerとリーバ・マッケンタィアReve McEntireだ。
黒人が司会を行うのはアメリカカントリーミュージック史上初めてだ。僕は今までカントリーミュージックにおけるブラックアーティスト存在に疑問を投げ、否定的であった。
その理由は簡単だ。黒人と白人は音楽のルーツが異なる。
そして黒人のカントリー歌手はアメリカ社会の都合で時代とともに現れる。結論から言うと、
彼らはカントリーミュージック団体や制作会社、所謂「業界」、そして「メディア」が作り上げる社会性によるものだ。
歴史をみれば、近年までほぼ唯一のブラックカントリーシンガーは
チャーリー・プライドCharly Prideだった。
今回、彼は特別賞を受賞する。

Charly Pride

彼の出現の背景は「公民権運動」だったと思う。
僕も彼のLPアルバムは一枚持っている。共鳴したのであったろう。
チャーリー・プライドCharly Pride 1934年、ミシシッピ州生、は体が大きいハンサムな黒人だ。ニグロリーグ野球プロ選手であり、陸軍に服務した。軍務から戻り、野球と歌をはじめ、ナッシュビルで1967年より歌手デビューした。All I Have Offer You, Missippi Cotton Picking Town,そしてIs Anybody Goin’ To San Antoneなど他人の曲も数多くうたった。声が良く、彼の人柄、ファミリーマンであったので、人気が出たそうだ。「All I Offer You Is Me」は複雑な歌ではない。
むしろ「ミシシッピの綿摘みの町」の方が彼向きだが、ひねりがない。

同じくらいの時期にトミー・ジャクソンとTomyJackson1944年、バルバトス生、と言う人がいた。「The Grand Tour 」を歌ったが、この歌はジョージ・ジョーンズの持ち歌で、他にも伝統的なカントリーを唄った。恐らく、この手の人は沢山いて、各種のショーなのに異色な歌手として出演したのであろう。見かけの良い黒人だ。

Tony Jackson

そして今はダリウス・ルッカーDarius Ruckerだ。

Darius Rucker

彼は馬車の車輪「Wagon Wheel」と言う曲で56回グラミー賞2014を獲得した。デリウスは1966年チャールストン・サウスカロナイナ生、生粋の南部黒人だ。
5人の姉妹・兄弟とともに看護婦だったシングルマザーに育てられた。サウスカロナイナ大学卒、今も故郷に暮らす、女房は白人で3人の子がいるファミリーマン、模範的なアーティストである。
在学中からロックバンドで活動し、R&Bは2007年まで、カントリーは2008年からだ。申し分のないブラックカントリーアーティストだ。

現在はジミー・アレンJimmie Allen1986年、北部デラウエア州生まれの若者がいる。

背は低いがなかなか動きの良い男だ。
ヒット曲は、トレラーに物乞いにきた落ちぶれたウィツチからマジックバトンを貰い、夢をかなえていくというハッピーな歌、
Make Me Want」がある。2019年CMAのビデオ賞を獲った。

彼はデラウエア州からナッシュビルに移り、女房は白人だ。
これからのブラックカントリーアーティストだろう。

ミルトン・パットンMilton Patton年齢不詳、アーカンソー州生
Trouble」と言う歌オリジナルだろうがある。彼も見かけの良い男だ。

チャーリー・プライドがブラックカントリーアーティスの第一期の人でアメリカは公民権運動Civil Right Movementのさなかだった。マーティン・ルーサー・キング牧師が「I have a Dream!」と演説したのは1963年だ。
そしてダリウス・ルッカ―がデビューしたのはオバマ大統領が
出現した年だ。
今年はBlack Lives Matterが一大潮流となりアメリカ全土を流れた。
恐らくブラックムーブメントの第二期だ。
だからCMAですら黒人を意識しなければならない。
でも音楽の本質からは外れてないか???
これが僕の疑問だ。
ブラックアーティストのパフォーマンスは水準以上だろう。しかし
カントリーミュージックと言う観点からみるとあり得ない風景が延々と続いているように見える。
アメリカ人のカントリーミュージックファン友人たちは黒人カントリーを「冗談」と捉えている。
確かに黒人のファミリーマン、敬虔なキリスト教徒、そしてカウボーイもいる。でも現在のブラックカントリーアーティストの歌を聴いてみると、本当に彼らのサウンドか, 遊離してないかと言う疑問が出る。上の4曲を聴いても心に訴えるものが薄い。
白人の好み、業界やメディアが操作しているのではないか?
歌は人間の心から生まれるものだ。(この項以上)