20、カントリーミュージック・アワード

何事も、「受賞」するのはひとつのステータスであり、誰しもの励みである。アメリカは表彰の国で、あらゆる機会で個人やグループに名誉を与える。良い習慣だと思う。
カントリーミュージックには、エンタメ全体の、あらゆる音楽の、そしてカントリーミュージック界と、幾つかの賞がある。
それらの授賞式は記念すべきイベントになり、多くは全国テレビネットワークで放送される。
残念ながら今年2020年はコロナ禍のため多くのイベントが縮小され、無観客で行われ、行われる。

総合的音楽業界では、グラミー賞GRAMMY AWARDが業界最大のイベントで、秋にノミネーション、春に受賞がある。僕も一度、授賞式に参加した。
グラミーは音楽産業団体The Recording Academyの主催で1959年から62回を数え、映画のアカデミー賞、演劇のトミー賞、テレビ番組のエミー賞とアメリカ4大賞、アワードの一つだ。

グラミー賞

蓄音機の「グラマフォン」に名は由来する。この賞は会員の投票で選考される。
4つの年間最優秀賞の部門は、レコード、アルバム、楽曲、新人だ。
それに音楽ジャンル別の賞があり、おそらく数十の賞がある。
カントリー部門の受賞では、先の全体4つの部門では、
最優秀レコード 
1995  シャリル・クロウSheryl Craw All I Wanna Do
2007   デキシー・チックスDixie Chicks Not Ready To Make Nice
アルバム 
2007  デキシー・チックスDixie Chicks Taking The Loving
2010   ティラー・スィフトTaylor Swift Fearless
2016   ティラー・スィフトTaylor Swift 1989
2019  ケーシー・マスグレイブス Kacey Musgraves Golden Hour
楽曲 
2007 Not Ready You To Make Nice
新人 
1995 シャリル・クロウ Sheryl Craw
1997 リアン・ライムス LeAnn Limes
2007 キャリー・アンダーウッドCarrie Underwood
などだ。カントリー受賞は1990年代半ばからだ。
あとはカントリーカテゴリーで部門別に延々とある。
過去10年間の最優秀カントリーは、
2020 62回 Willie Nelson   Ride Back Home
2019  Kacey Musgraves    Butterflies
2018   Chris Stapleton     Either Way
2017  Marren Morris     My Church
2016  Chris Stapleton    Traveler
2015   Carrie Underwood  Something In To Water
2014  Darius Ruler     Wagon Wheel
2013  Carrie Underwood Brown’ Away
2012  Taylor Swift Mean
ここ10年間をみてもおおむねまともだと思う。 黒人のDarius RulerのWagon Wheel は異色だが。
2017年受賞のマレン・モリスMarren Morris 1990年、アーリントン テキサス生はその後も活躍している実力のある歌手だ。 

僕が行った授賞式は1994年、勤務していた会社の入場枠だった。本来はエンタメ担当のエスモトが出る予定だったが、彼が急遽、日本に出張することになった。グラミー賞はこの年だけ、ロスからニューヨークに移り行われ、ラジオシティミュージックホールで行われた。カントリーカテゴリーではデワイト・ヨーカム、メリー・チッピン・カーペンター、ブルックスアンドダーンが受賞したが、何といっても最優秀はホィツトニー・ヒューストンだった。彼女はその後悲劇的に死亡した。
ラジオシティミュージックホールは古い建物だが街のど真ん中、観客数千人規模の大がかりなところで、出入りだけでも大変だった。

エンタメ文化の最高峰には大統領の賞と言われる、ザ・ケネディ・センター・アワードThe Kendy Center Awardがある。
ジョニー・キャシュ、ウィリー・ネルソン、ドーリー・パートン、
リバ・マッケンタイナー、マール・ハガードが受賞した。
(次はエミリー・ハリス、クリス・クリストファーソンと予想されるが、「大統領」の項で紹介した。)

そして二つのカントリーミュージック団体、CAMACMが各々のアワードを制定、選び、表彰していて、イベント化してきた。
各々、毎年の受賞者はその項目の多さから膨大な数に及ぶので
そのリストは各々のサイトで確認いただき、このコラムでは
傾向やアーティストがどういう経過をたどり、カントリーミュージックのその後に影響をあたえ、自らの地位を築いたかをみた。
何度も書いたがアーティストには自分のサウンドが重要だ。
そしてアメリカの何と言うか社会的な理想論も。

団体、CMA、カントリー・ミュージック・アソシエーションは
1967年創立、ナッシュビルに本拠を置く団体で、グランド・オールオープリーと関係が深い。傘下にはいくつかのホールオブフェームと言う団体がある。国際的にカントリーミュージックを広めると言うのが団体の趣旨だ。
CMAアワードは会員が選択して、権威がある。12部門の賞がある。全国ネット局が放送する。2016年の50周年イベントが有名だ。
授賞式はナッシュビルのブリジストンアリーナ、ライマンズホールの向かい、で行われる。

部門は最優秀賞エンターティナー、女性ボーカル、男性ボーカル、グループボーカル、デュオ、新人、アルバム、シングル、楽曲、イベント、ビデオ、音楽家(伴奏)の12部門だ。
受賞アーティストは連続することが多い。
メリー・チッピン・カーペンターMary Chapin Carpenter34から37回まで6回連続、ミランダ・ランバートMiranda Lambert も6回、テイラー・スィフトTaylor Swift, キャリー・アンダーウッドCarrie Underwood, ブラッド・ペイズリーBrad Paisley 、
マルチナ・ブライドMartina McBride、キャリー・アンダーウッドなどは3回、トビー・キースToby Keith、アラン・ジャクソンAlan Jackson、キース・アレンKeith Allen、
ルーク・ブライアンLuke Brian、クリス・スティプルトンChris Stapletonなどがそうだ。
ブラッド・ペィスレーBrad Paisly、1972年 ウエストバージア生は
何度も各賞に顔をだしていたが、2000年、CMAとACMの新人賞を2008年には両方の男性ボーカルを受賞した。2001年、映画、花嫁の父の花嫁役、キンバリー・ウイリアムスと結婚した。ユーモアのある男で自分のサウンドや振り付けが明確でさらに期待できる。

もうひとりブレーク・シェルトンBlake Shelton 1976年、オクラホマ生も何回か受賞しているナッシュビルアーティストだ。グラミーに何回かノミネートされていた。
彼は静かなバラード曲を背の高さに似合わずしっとり唄う。

2020年は11月14日に行われる予定だが、どのように行われるか?

ホストは黒人歌手Darius Rucker とReba McEentire
ノミネートされている人々はなじみの顔が多いが
デュオのDan+Shey, グループのOld Dominionが注目される。

団体、ACMは、1964年にロサンゼルスで創立された団体だ。当初は西海岸におけるカントリーミュージック普及を目指していた。
そのアワードがACM Awardだ。

当初は、ベーカーフィルドサウンドのバック・オーエンス、マール・ハガードが受賞していた。4-5月にかけてラスベガスで授賞式が行われ全国ネット放送で放映される。今年は9月で、無観客だった。
会員とネット投票で選考する。
項目には、songwriter、radio, industryなどがあり15部門。
本年の受賞者は、最優秀がCarrie Underwood、Thomas Rhett
そして Luck Comb, Marren Morris, Dan+Shey, Old Dominion,
などだ。アルバムでLuck CombのBeer・・が、ビデオでThomas Rhett、イベントがMarren Morris とMiranda Lambertのコラボが取ったのは興味深い。

西海岸、ハリウッドらしいしゃれた選択と式典だ。
2020年の男性ボーカルはトーマス・レットThomas Rhett
1990年、ジョージア生で、2010年にデビュー、2013年頃から
各種の賞にノミネートされていた。今風の若者のハワイでロケした
ミュージックビデオだ。これなら100%幸せな男として死ねる。

ちなみに、ビンス・ギルVince Gill 1958年生はグラミーに40回
ノミネートされて20回受賞、CMAは1990年来11回、ACMは1984年以来41回受賞している。CMAの比率が低いが、グラミーは凄いものがある。彼は伝統的カントリーミュージックへの憧憬が深く、スキャンダルもない優等生歌手であるからだと思う。誰しもに彼のサウンドや仲間や家族を思いやる気持ちが伝わるからだろう。
そしてシャリル・クロウ1962年生、デキシーチックス、テイラー・スィフトは美人で政治的活動家としての名もある。

Sheryl Craw

かくて、2020年、各賞受賞式、最大イベントはコロナのためにさんざんな目にあっている。残念だ。僕は在米中には放送を楽しみに観ていたが、最近はネット配信で楽しんでいた。主催者がそれなりの工夫はして受賞イベントは製作しているが無観客では寂しい限りだ。
系統的に各種の賞の傾向を眺めていると、人気が出てくるアーティストが推測できる。男女の比率はマーケットが支配しているのだろうが近年は女性が強い。しかし各種の団体がアメリカの社会性に反応して政治や人種を考慮しているのは、日本人だから言えるがいささか問題がある。音楽はそのサウンドが好きな人達が評価する。社会が決めることではない。(この項以上)