16、合衆国大統領とカントリーミュージック

この文を書いているのは、2020大統領選の2週間前だ。
45代トランプ大統領はテレビ、新聞、SNS,あらゆるメディアの反感をかい、民主党バイデン候補に世論的に、また調査データでも圧倒的に不利な情勢だ。
彼はニューヨーカーであり、またリアリティショーのタレントだったので、カントリーミュージックにほど遠い存在だった。
そして彼は多分、他のエンタメにもあまり興味を示していない。
共和党、彼の岩盤支持者、田舎のワーキングクラスの人々はもろにカントリーファンが多い。逆に彼を支持してない層の主流、ユダヤ系、黒人、ヒスパニック系、LGBT、彼らにはカントリーファンは少ない。だからカントリーミュージックを敢えて使う必要はないとトランプ陣営は考えたのであろう。
現在、僕はアメリカ外交史の講義で、歴代アメリカ合衆国大統領には様々な考え方、また姿勢の人々がいたことを勉強している。

40代ロナルド・レーガンDonald Reagan大統領は自らもウエスタンムービーの俳優だったが、彼は当時のカントリーミュージックが好きでまた詳しかったようだ。
1982年、ホワイトハウスにタミー・ワーネットTammy
Wynetteを呼び、Stand By Your Manを唄わせたことは
話題になった。タミーはプアーホワイトの更に下層の出で美容師だった。イケメン好きだが、男運が悪く苦労した人だったので、力強い男にあこがれていたのだろう。レーガン大統領はタミーに
「You are beautiful.」と言っている。これはなかなかの台詞で世の女性の人気を集めた。

レーガン大統領は共和党だったが、政党別では、民主党の42代クリントンClintonと44代オバマObama大統領がカントリーミュージックを上手に利用した。彼らの支持層ではない層に食い込むためだった。
クリントンは、1995年、3人の美人歌手、どうも彼は美人好きだったのだろうが、
キャッシー・マッタKatty Matea, アリソン・クラウツ Alison Krausss, スージー・ボーガスSuzy Boggusを呼び、
子供教育は親教育と言う歌、「Teach Your Children」を聴いた。若き、野望溢れるファーストレディ、ヒラリーもいた。彼女もこの時は美人だった。この歌は彼女の選曲だったかもしれない。

オバマ大統領は黒人で本拠はシカゴだったから、カントリーミュージックの反対側にいた。でも彼もウィリーと一緒にホワイトハウスにおける軍の表彰式で「On The Road Again」、マイクを持って唄った。大統領がカントリーソングを唄ったのは後にも先にもこれだけしか見ていない。

大統領関連の芸術音楽ビッグイベントと言えば、「THE KENNEDY CENTER HONORS」を抜きには語れない。1978年来、毎年、数人の映画・音楽・演劇・文学関係の個人やグループに大統領が賞を与えるのだ。音楽はジャンル的にはジャズ、クラシック、ミユージカル、ポップス、ロックそしてカントリーだ。
今まで受賞したカントリーミュージック歌手は、
1991年 ロイ・エイカフ
1996年 ジョニー・キャシュ

CASH

1998年 ウイリー・ネルソン
2003年 ロレッタ・リン
2006年 ドーリー・パートン
2010年 マール・ハガード 
2018年 リーバ・マッケンタィア

R.M.

イベントはCBSの特別番組になっていて、毎回、各受賞者を称える
様々な他のアーチストによるショーが披露される。
ケネディJFKを記念しての賞だから、キャロライン・ケネディさんが開会挨拶をする。キャロラインさんは東京アメリカンクラブ名誉会長(駐日アメリカ合衆国大使)だった時にクラブでしばしばお目にかかった。彼女はこのイベントではとてもファショナブルで見違える。下、2010年の受賞者、黒人、女性が優先されるのは仕方ない。

この年のマール・ハガード受賞の番組が良い。感動的だ。
この時はオバマ夫妻がJFK CENTERホールでホストした。
彼の紹介トレーラーと彼を記念した4組の歌手の演奏は僕の好きな人達ばかりだったが内容も素晴らしかった。司会、ビンス・ギル
1、 ミランダ・ランバートMirand Lambert1983年生とクリス・クリストファーソンのシルバーウィング「SILVER WING
2、 ビンス・ギルとブラッド・ペイトレーのワーキングマンブルース [WORKING MAN BLUES]
3、 シェリル・クロウSheryl Crow1962年生とウィリーネルソンの
 [TODAY I STARTED LOVEING YOU AGAIN]
4, ウィリーとジェィミー・ジョンソンJamey Johnson1975年生、キープラの
RAMBLIN’ FEVER」1977、全員が出て盛り上がり終わる。

YouTubeのマール・ハガード部分は開始51分後から始まるので、イントロを見て、そこまで飛ばすと良い。カントリーサウンドはかくありなんと言うような最高の出来だ。多分、ウィリー・ネルソンが
仕切ったと思うが、彼のプロデュース能力は大変なレベルだ。

昨年、トランプ大統領はこのケネディセンターイベントを欠席した。とてももったいないことだった。
さらにオバマさんは
2014年、President Obama Welcome White Courtと言うイベントで
カントリーミューックショーを開催した。
彼はまず開会挨拶で黒人カントリー歌手のチャーリー・プライドCharly Prideをあげ、カントリーミュージックは(南部ホワイト)だけでなく、いろんな人に開かれていると語った。
僕の思い込みだが、黒人にはカントリーサウンドは無理だ。彼らには別なサウンドがあり、彼らの音楽的才能はそこでいかんなく発揮されているではないか・・・
この学芸会方式イベントにはいろんなカントリー歌手が出てくるが
やるほうも聴いている方もカントリーの雰囲気ではなかった。

テキサスの出身ブッシュ親子はどうか?
父の41代George H. W. Bushさんは好きな音楽であるはずだが、何も活動はない。これはジョージアの39代ジミー・カーターさんにも言える。彼がカントリーサウンドを嫌いなわけはないのだが。
息子の43代George Bushには妻ローラとの35年目結婚記念日にジョージ・ストレートが送ったと言う歌、「I Cross My Heart」と言う歌がある。ブッシュ息子は散々な評判だったが、アメリカ大統領を良く言う習慣は今のメディアにはない。いずれ彼も妻に助けられたのは事実だろう。彼らのCMソングだ。

今回の大統領選で感じているアメリカ社会の大きな変化は、保守と革新、つまりあの国では共和党と民主党の支持層逆転だ。
保守は所得が高い、革新は低いと言う通説はむしろ逆なのだ。
民主党支持層、リベラル、は教育も所得の高い人達が理想を掲げている、これにはLGBTの意見が強く反映され、SNSを始め全てのメディアを独占した。
そして共和党、保守層の中核は地方白人、高卒以下と言うではないか・・元よりワーキングクラスはホワイトカラーより所得が低いのが常識だ。だから所得の低い人達が保守に回っている。
アメリカ人の主張内容が時代と共に変遷し、そして各々の主義主張が行き過ぎているのだ。
カントリーミュージックサウンドファンはまさに田舎の白人、ワーキングクラスだから共和党支持、トランプさん岩盤支持層を重なっている。
もしトランプさんが2020年落選するとなるとアメリカも世界も混乱は避けられない。
僕なりにその理由を挙げれば、トランプさんは自分の岩盤支持層を音楽面で良く理解していなかったような彼の感覚的現象が一つの理由だ。大統領になっても彼はニューヨーカーだったからではないかと思う。
大統領とカントリー歌手ではデワイト・ヨーカムは34代アイゼンハワーの名だ。マール・ハガードの前科はレーガン大統領が知事時代に
恩赦した。僕の若者の頃のヒーロー「JFK」はイベントの冠として残っている。歴代大統領では44代オバマがカントリーサウンドを一番利用したうまい奴だった。(この項以上)