第4章 アウトローとカウボーイ・サウンド
テキサスは自然の厳しいところ、現代文明の車、ハイウエィ、電気、医療などが無かった時代はとても大変な生活だった。
特に農民やカウボーイ、外で働く人間の周囲は牛か馬だった。
テキサスは毒蛇の多いらしい。カウボーイ・ギアのハット、ブーツ、ジーンズ、厚い布地の長袖シャツ、ガンベルトはそのためだとも言われているし、拳銃は蛇を撃つためと自分を守るためにも重要なアイテムだった。そしてナイフも。そんな中で生きてきた、彼らがTEXSAN, テキサス人だ。
野外で寝て、食べるものは限られていた。馬や犬がいなければ生活できなかった。焚火を囲み、仲間とカウボーイソングを歌い、
たまに町に出たら、ホンキートンクが唯一の娯楽だった。
酒、賭博、女。1か月間の労働で得た金は1日で消える。世の中に女性は圧倒的に少ない。今でもそういう人は多いが。
ステージコーチ、バンデット、鉄道、列車強盗、テキサスレンジャーズ、騎兵隊、インディアンズ、そんな時代を引きずり生きていたのがカウボーイだ。法の支配は完全ではない。頼れるのは自分と仲間だ。
だからテキサス人は仲間意識が強い。そして少しアウトローにならねば生きていけない。そんな世界だった。
テキサスサウンドの古い歌手で、僕が好きな人達は、
レフティ・フィズルLefty Fizzle 1928-1975 Cosicana, Texas生まれが良い。声も良く、人気があった。
If She Trust Help Me Get
The Long Black Veil 1959 など、多くのヒット曲があった。
飲酒の問題があったのだろう、彼は判事の車に当て逃げして逮捕された。「I Love You A Thousand Ways」 プリズンソングだ。
「君を千の方法で愛す、だから僕が自由の身になるまで待っていてくれ」と言う切ない歌。
ジョニー・ペイチェックJohnny Paycheck 1938-2003 オハイオ生、が良い。
If You Think You’re Lonely
I’m The Only Hell My Mama Ever Raise 1975など多くのヒット曲がある。
ペイチェックはサルーン(酒場、ホンキートンクと同じ)で絡まれ、そいつの頭に発砲して逮捕された。
裁判に掛けられた。銃砲所持違反くらいの罪でほとんど無罪になったが、彼の歌のせいだろう。憎めない男だ。
「俺はどんどん老いるが頭はさっぱり良くならない」と言う歌、我が身にように感じる。「I Grow Old Too Fast And Smart Too Slow」
この手の人は最近まで多くいた。例えば、
ダレル・シングタリィ Daryle Singletary 1971-2018 カイロ ジョージア生
キース・ウィトレィ Keith Whitley 1954-1989 アジュランド ケンタッキー生
リッキイ・バン・シェルトン Ricky Van Shelton 1952 ダンビル バージィニア生
Ricky Van Shelton
また、チャーリー・ダニエルズ・バンドのCharlie Danieがいた。
1936-2020 ウィルミントン ノースカロナイナ生
少し若い、ジェミー・ジョンソンJamey Johnson 1975 モントゴメリー、アラバマ生が代表格だが、他のアーティストも素晴らしい。
「High Cost OF Living 」はもう悪い仲間とは付き合わないと、夢で誓っている男の話。身につまされる歌だ。
以上のようなサウンドは少し深刻過ぎるのだろう。最近はカウボーイソングズと同じくあまり流行らなくなったのは残念だ。
サイト、Great American Country が選んだ
The Best 20 Songs About Cowboys and Cowgirls は以下の通りだ。
Amarillo By The Morning Gorge Strait
Good Ride Cowboy Garth Brooks
Night Rider’s Lament Suzy Bogguss
Should’ve Been A Cowboy Toby Keith
Some Day Soon Ian Tyson
Mamas Don’t Let Your Babies Grow Up Cowboys
Texas In 1880 Foster Lloyd
The Cowboy Hat Chris Ledoux
I Wanna Be A Cowboy’s Sweetheart Pasty Montana
Whatcha Gonne Do With A Cowboy Chris Ledoux and Garth Brooks
The Last Cowboy Songs The Highwayman
The Beach Of Cheyenme Garth Brooks
Cowboy Logic Michel Martin Murphey
The Strawberry Rose Marty Robins
Cowgirls Don’t Cry Brooks and Dune
Bands The Rodeo Clown Moe Bandy
Coyotes Don Edwards
Cowboy Us Toni Harris
Happy Trails Roy Rogers
Honky Tonks Toby Keith
これらのカウボーイソングズは妥当な選びだ。
「We Are The Cowboys」 Willie Nelson は、テキサスのカウボーイは自由の象徴であると唄う。
カントリー歌手とその歌はどこの出身でどこにいようがナッシュビルを向いている。テキサスカントリーサウンドのパパ的存在、ウィリー・ネルソンも初期、10枚ほどのアルバムはナッシュビルの意向であったようだ。
「独自の方向を出していたら、もっと彼の成功は早かった」と、バック・オーエンスは書いていたが。
ウイリー・ネルソンやウィロン・ジェニングスはこの傾向を利用して髭面、長髪、汚れたような黒系の衣装、そして自分のサウンドをアウトローとした。
共鳴したジョニー・キャシュ、クリス・クリストファーソンなどが
加わった。
クリスはジョニーの婿だった。自身でヘリコプターを操縦してジョニーの庭に着陸して、の歌のテープを渡したほどの間柄だ。
テキサスはドイツ系移民が多かったそうだ。地名、ルッケンバッハ
Luckenbach でウィロン・ジェニングスWaylon Jenningsが毎年、コンサートをやり人気を集めた。ウィリーとWW2と言うコラボをやった。彼の歌、[Luckenbach Texas] は、
ギターと良い女がいれば、名声はいらないBasic Of Loveが本音という歌だ。 。
カウボーイは自由に生きる人間のシンボルとあこがれである。
彼らは誇りを傷つけられことが一番嫌なことだ。それは僕も同じだ。
以下の二人はテキサスのsong writer singer としても優れた人達だ。
ロッドニィ・クロウエル Rodney Crowell 1950 Jacinto Texas生
Above and Beyondをはじめ僕の好きな曲を沢山書いている。
彼はアウトローでもカウボーイでもない。テキサンだ。
彼ほどのテキサス魂の人はいないと思う。多くのテキサスの歌もある。「Deep In The Heart OF Texas 」
クリス・クリストーファーソン Kris Kristofferson 1936 ブランズビル テキサス生は忘れてならない人だ。
軍人としてエリートコースを歩んでいたがカントリーミュージックへの情熱が捨てられず、母には勘当され、妻に去られ、それでも歌手、映画俳優、そしてsongwriterとしての道を選んだ。
映画は僕が好きなサム・ペキンパーの「ビリー・ザ・キッド」1973、
をはじめ数十の作品に出ている。一番良かったのはブライアン・デ・パルマ監督の「アリスの恋」Alice Don’t Live Here Any More,
1975 アカデミー受賞作品の、牧場主の役だ。
その後1986年には「ジェシー・ジェイムス」を演じた。
だけど、僕が一番評価するのは彼のソングライティングだ。うまい、
メロディだけでなく視覚的なリリックスも良い。
Sunday Morning Com’n Down
Help Me Make It Through The Night
For The Good Times
彼はビリーザキッドとジェシー・ジェムズ、2大アウトローを演じたからバラードライターを超越した存在だ。
彼のゴスペル曲、「Why Me Lord」は、娘を交通事故で失って書いたと言われている。以下の演奏は大勢の人達とのコラボだが、皆の心がひとつになっていることが実感される。
ウィリー、ロッドニィ、クリス、彼らは現在も活躍しているが年老いた。皺だらけではないか・・僕も年をとるわけだ。彼らとの付き合いも40年以上になる。
かくして、アウトローズたちも僕のようにおとなしく、優しくなった。そしてカウボーイズも、テキサスには映画になった「スペース・カウボーイズ」がいる(野口さんがそうだ)。
続いて、デジタル・カウボーイズが出現して、従妹の息子、成彦さんは、拳銃の代わりにハイテク医療機器を手に手術をするメディカル・カウボーイになった。
ウィリーの歌にあるように、カウボーイズは「テキサンズ、メキシカンズ、ブラックメン、ジューズ」になった。今やホワイトだけでないのだ。人種だけでなく、カウボーイズ・カウガールズには性別も年齢もなく、テキサスには世界中から、新しい分野を開拓する人達が目指してくるからだ。
(テキサスの項終わり)