15、クリスチャンカントリーソングズの魅力

カントリーミュージックはキリスト教と関係が深いと、何度か書いた。
教会の日曜礼拝で聖歌隊が聖歌を歌う。演奏する。そのゴスペル曲がカントリーの一つの
ルーツなのだ。
アメリカ各地を旅行していると、田舎の、どんな小さな町にもひとつでなく、複数教会がある。豪邸は中に自分の教会がある。
教会はアメリカ社会、特に地方社会に無くてはならないものだ。

アラバマ州の教会

そして教会には歌は無くてはならないもので、教会だけでなく家でも唄う。
カントリーが元になった宗派は南部でさかんなサザンバプテストSouthern Baptist、これはプロテスタントだ。メソジストも多い。ゴスペルGOSPELは福音を言う意味だ。
アメリカでは大統領選にも大きな影響を持つ福音派エバンジェリカルEvangelicalがその別名だ。
教会をチャペルChapel、牧師をプリーチャーPreacherと言うような地域だ
神を、イエスを、天国を、バイブルを、が音楽のテーマだ。地名エルサレムも良くでる。
実際、南部で地元の白人教会に行くと、自然に普通にカントリー歌手が唄う歌が出てくる。
礼拝後や催しものでもやる。黒人教会はまた別な音楽だ。
ほとんどのカントリー歌手がゴスペルを唄う。彼らは子供の頃から聖歌隊で歌を、楽器を習いそして唄ったから自然だ。
ゴスペルは広く神の音楽だから、黒人のブルースやソウルと区別し、ホワイトゴスペルとかクリスチャンカントリーとか、カントリーゴスペルとか言う
キャリー・アンダーウッドCarrie Underwoodがビンス・ギルVince Gillの伴奏とデュオで唄う定番、偉大なる神How Great Thou Artだ。神の偉大さを称えたものだ。観客も唄う。

カントリー歌手たちは興行的な持ち歌のゴスペルがあり、そのアルバムは個性がテーマだ。
僕の手元にも幾つかのアルバムがある。

一番聞いたのはウィリーネルソンだ。アルバム名はHow Great Thou Art 1996年
伴奏は自分のガットギターと姉ボビーBobbie Nelsonのピアノ、ジョン・ブロンデールJon Blondellのベースだけだが迫力がある。 曲目は全てトラディショナルだ。
1、 How Great Thou Art
2、 Sing Low, Sweet Chariot
3、 It Is No Secret
4、 Kneel At The Feet Of Jesus
5、 Just I Am
6、 Just Closer Walk With Thee
7、 Father Along
8、 What A Friend We Have In Jesus
9、 In The Garden

ウィリーは自分でゴスペルは作らず伝統的な曲だった。
ここでイエスさまを言う言葉は、ジーザスJESUS, の他Christ, Son of God, Thee などだ。

アラン・ジャクソンAlan Jacksonは2枚出した。両方とも良い。アランは敬虔なクリスチャンだ。
アルバムのタイトルは、大切な思い出Precious Memories 1と2だ。2006年と2013年だ。これは歌の題名だ。1は全てトラディショナルゴスペルで2には新しい歌も入れた。
1は15曲、2には11曲、計26曲のゴスペル持ち歌がある。以下の2曲はトラディショナルだ。キリストの血は彼への思いで、フライアウィは天国に行くと言う意味だ。
Are you washed in the blood and I’ll fly away。観客がのっていた。

バック・オーエンスBuck OwensとBackaroosの「母の聖書の埃」Dust On My Mother’s Bible1966年はほとんど彼が書いた曲だ。ゴスペルを自分で書いたのは凄いと感じた。
「自分に聖書を読んで呉れた母はいない、天国でまた母と聖書を読む」と言う歌詞だ。
このバックのオリジナルゴスペルアルバムはビルボード誌1位にランクした。
歌はバックとトラック野郎レッド・シンプソンRed Simpson、ドン・リッチDon Rich、ボニー・オーエンスBonnie Owensなどが書いた。サウンドはバックのものでヒュルヒュルビュンビュンしており、評には「教会でパーティをやり踊るような」と書かれた。12曲入っている。この頃のバックは髪型、衣装も決まっており台詞も良い。

ゴスペル曲の中には我々になじみのあるメロディーが聞かれる。
明治時代にアメリカの宣教師、伝道師が日本に来て教会で唄ったからだ。

Just A Closer Walk With Thee
What A Friend We Have In Jesus
Amazing Grace
グレースも神と言う意味で、18世紀末の歌だ。奴隷船船長が嵐あって神に祈り救われたことを歌った。彼はその後、牧師をなったそうだ。
Old Ragged Cross古びた十字架 
多くの歌手が唄っているが以下はブルーグラスサウンドだ。キリストが掛けられた十字架を唄った。

I Saw The Light
ハンク・ウィリアムスの自作の曲で、自伝映画タイトルにもなった。ハンクもクリスチャン音楽に熱心だった。彼の死を聞いた時、聴衆がこの歌を合唱した。
ジョニー・キャシュJohnny Cash をはじめほとんどのカントリー歌手はクリスチャンソングズ、カントリーゴスペルを熱心に唄っていた。
Just As I Am
It Is No Secret
Only Trust Him

エルビスElvisはコンサートでは必ず一曲はゴスペルを唄った。彼のゴスペルアルバム「谷間のやすらぎ」も大いに売れた。
彼のオリジナルでは「Crying In The Chapel」が有名だ。

アン・マレーAnne Murryのローズ・ガーデンRose Garden
天国にあるバラの庭から来ている、そして
In The Gardenと言う歌も皆が知っている。

この種の歌は日本歌曲文化にはないものだろう。
日本にはキリスト教関係の学校が多い。カソリック、プロテスタンと、でもキリスト教は西欧化した日本で伝道はまったく成功しなかった。日本全体のキリスト教徒は全人口の1%、東京だけだと6%だそうだ。
なおサザンプロテスタンSouthern Protestant、教会牧師プリーチャーPreacher、毎週日曜日の礼拝を執り行うが、小さな教会では信者はせいぜい2-30人だ。彼らの中で信望があり、聖書に通じる人が選定されるらしい。

ナッシュビルのライマンズオウドトリアムRyman Auditoriumは教会をイメージしており、前の方の席はベンチだ。
ゴスペルはカントリーミュージックのひとつの重要なジャンルであり、賞もある。ビンス・ギルの女房、エィミー・グラントArmy Grantはその有名な歌手だ。
ゴスペル音楽はワーシップWorship Music ともいわれ、神を崇めるところからプレーズ
ソングズPraise Songs,賛美歌、スピリチャルSpiritual Alton ,クワイヤーChoir, Southren Gospel, インスピレーションInspirationとも呼ばれる。

これらの歌を皆で楽しむ目的は何だと言うなら、「心のよりどころ、人生の道筋、やすらぎ、そして生きがい」などの信仰ではないか。ゴスペルを聴いているとやはり一度は聖書に目を通したいような感じになりそうだ。聖書からの言葉も多い。
聖書と十字架、そして神のいつわりのない言葉を歌にする、演奏する、唄うと言うのは素晴らしいことだと思う。そして誰しも悩みはある。世の中の自分を家族だけでなく回りと共有する、個人と社会の関係を音楽がほどよく結び付けているのではと感じる。
カントリーミュージックの魅力はここにもあるのではないか。この項以上

なお、今まで掲載した記事の中に2曲、ゴスペルカントリー曲はある
ひとつ、思い込み論 5、楽器の項にTeea Goansテア・ゴーアンズのホット・ア・フレンド・ウィ・ハブ・イン・ジーザスWhat A Friend We Have In Jesus,
ふたつ、勝手学 4、宗教の項にアラバマAlabamaの ジャスト・アクローサー・ウオーク・ウィズジィーJust A Closer Walk With Theeだ。
前者は明治時代に宣教師が日本に持ち込み、「北の星座」と言う曲だ。
後者はカントリーと黒人ゴスペルの両方に共通の曲だ。
1997年冬にニューオルリンズに行き、葬式パレードに出会った。そこで黒人バンドが
歩きながら演奏していたのがこの曲だった。
東京の「New Orleans Stompers」の演奏を見つけたが,皆すごく楽器が上手だ。日本人の楽器演奏の水準はとても高い。アラバマの演奏と聴き比べたらカントリーとジャズの違いが少しは理解できる。