12、カントリーミュージックのデユットとハーモニー

カントリーミュージックのひとつの魅力は歌のハーモニーHARMONYだ。
これはこのサウンドの特徴だと思う。この音楽の大きな下地がクリスチャンサウンドで、それらは聖歌隊、コーラスグループだから、元より歌のハーモニーは重要な要素であった。
ハーモニーはコーラス、デユットから生まれる。複数の歌手が異なる音程で唄うのだ。
伴奏も様々な楽器のハーモニーで構成されているが。演奏における歌と楽器それぞれの
ハーモニーと全体のハーモニーは魅力を増幅させる。
音程scale、1オクターブ差で全体を2人で唄う、バースverseを分けて会話型にする、コーラスchorus(繰り返し)で、音程pitch の音の差を付ける(3度上げる、また3度上げる)
と、「ハモル」は多種の組み合わせがある。複数の音声、デユットだけでなく、もっと大勢、トリオ、コーラスなどから生まれるが、ステージではバックコーラスとして、メインボーカルに合わせるもの。また編成は常時か、臨時かなどもさまざまな形式がある。
勿論ソロも良いがさまざまな音声が混じると歌に深みがでる
2人以上の有名歌手の組み合わせは「コラボレーション」とか言うそうだがこれはビジネス用語だ。
伴さんのグループ、皆で楽しんでいたとき、「ハモって良いですか?」と言った人がいた。その人は久しぶりで参加したが、楽器も歌も上手な人だ。会が楽しくなった。

ワイド・オープン・カントリーWide Open Countryというサイトにカントリーミュージック史ベストデュオと言うリストがある。デュオはデユットを同性同士としたものと言う定義もあるが、この記事では同じ意味。
1、 Brooks & Dunn
2、 Big &Rich
3、 Florida – Georgia Line
4、 Dan+Shay
5、 Brother Osbone
6、 Sugarland
7、 Montgomery Gentry
8、 Louvin Brothers
9、 Bellamy Brothers
10, Faith Hill and Time McGraw
11, Johnny Cash and June Carter Cash
12, The Judd

1位のブルックス・ダーンは別格だ
他は今まであまり意識していなかったグループだが、リストの4組が血縁関係だ。ハーモニーには声の質、合う、合わないも重要だと言う証左にはなる。本当の兄弟、姉妹、母娘は声が同質なのであろう。

ブルックス・ダーンの歌は
南部の田舎の赤土大地、古びた教会、川での洗礼、若者などが描かれている

昔、仕事でCMソング録音に立ち会った時、3人の女性コーラスが記憶にある。
「おはようございます」で現れた3人組は録音スタジオ玄関で待ち合わせ、普段着のままだった。譜面を渡され、ディレクターから説明を受ける、音合わせする。伴奏はすでに
収録してあったテープだ。2-3やりとりをしていたが、ほんの数分で音を完成させた。
あとで聞いたら、学校時代から長い間やってきたので慣れているとのことだったが、ハーモニーを生むには文字通り、長い信頼、それが重要だと感じた。

2019年1月にナッシュビルに行った。カントリーミュージックミュージアムの展示をみていたら、3大デユットの肖像があった。

左ドーリーとポーター、右ジョージとタミー
コンウエイとロレッタの巨大な肖像画

コンウエィ・ツィテイとロレッタ・リンConway Twitty and Loreta Lynn
ドーリー・パートンとポーター・ワゴナーDolly Parton and Porter Wagoner
ジョージ・ジョーンズとタミー・ワーネットGeorge Jones and Tammy Wynette
この3組には異存はない。
多くのヒットを飛ばした。1970年代のサウンドだ。
これらのおばさん、おじさんたちは良かった。100%カントリーの雰囲気で、特に男女ともにヘアースタイルにとても凝っていた。

彼らの活動は、
ジョージとタミーは1979年代初頭、7年間も夫婦であった。タミーがジョージの酒依存症を辞めさせる苦労話を読んだことがある。
The Ceremony1972, Two Story House 1980 , Near You 1976, Golden Ring 1976, We Go’na Hold On 1973などのヒットがある。

コンウエイとロレッタは、恐らく1960年代まではなかった方式のデユットカップルで個人的には各々まったく別な生活をしていたが、誰かが作りあげ、成功した例で、その後
各国でもこのようなカップルが歌う形式は流行した。
1971年から1981年の11年間に10スタジオアルバムと7編集、13シングルを出した。
2人の怪しい雰囲気が10年間以上も持ったと言うのはアメリカ社会の一面を表していると感じた。興行的には大成功だったのではないか?コンウエイは無一文で死んだが。

整理したら彼らの2枚のLPを持っていた。
Feelings‘1975とHonky Tonk Heros1978

このようなイラストジャケットはLPの時代よくあった
気持が悪いが、おじさんとおばさんが若者を演じていたのだ。

ドーリー・パートンとポーター・ワゴナーの関係は良く分からない。
ポーターはカントリーミュージック初期のテレビ番組「ポーター・ワゴナーショー」をもち
ドーリーを探してきて彼女を番組に出させ、スターにした。
1968年から1980年までデユットを組んだ。
13スタジオアルバム、15編集コンピレーション、21シングルと言う膨大な出版がある。
ポーターがいなければドーリーの現在もないわけだが。
ドーリーはカツラを含め時代とともに髪が大きくなったことで有名な歌手だ。

彼ら以外でも
エミルー・ハリスEmmylou Harris とロッドニー・クロウエルRodney Crowellのデユットがよい
彼らは2013年にブライアン・エイコーンBrian Ahernのプロデュースでオールド・イエロー・ムーンOld Yellow Moonと言うアルバムを出し、翌年グラミー賞のアルバムを獲得した。

古いところでは、ボニー・オーエンスBonnie Owensとマール・ハガードMerle Haggard
特記される。

ボニーは部分的なデユットでマールを大きく助けた。魅力的で安定した声でとてもきいていた。
しかし元夫バック・オーエンスとはデユットはツアーで限定的にしかしてない。
バック・オーエンスとドン・リッチのデユットはまたとても良い。バックはドン事故死のあと、ドンのギターの先が背中に当たる感じが懐かしいと大いに嘆いた。

ステージ上、マイク1本で複数の歌手が唄うのは音響さんがマイクをケチったわけでなく、効果だそうだ。
デユットは夫婦、カップル、関係のない取り合わせなどいろいろだが、歌の主題に男女関係が多いカントリーミュージックでは、歌の意味を深め、ハーモニーで音の魅力を増大させてその効果は絶大だ。(この項以上)