8、列車の歌は「カントリー」では何を意味するか?

カントリーミュージックには古くからの列車の歌(TRAIN SONGS)がある。
この場合の列車は蒸気機関車SLだ。
歌の歌詞はいろいろだが、何を意味しているのか?
アメリカの大地は広く、フリーウエイや航空便以前は19世紀半ばからおよそ100年間、独占的鉄道時代が続いた。
鉄道は特に田舎に住む人々には様々な重要な意味を持った。
移動や物流だけでなく、心的には、鉄道は過去との決別と未来、出会いと別れ、見知らぬところへの期待、そして力強さなどだ。
新幹線乗り場に行っても気持ちは同じだが人は多いが静かだ。
物理的にSLは大きな車輪音、振動、そして蒸気の熱気、石炭の臭いをばら撒きながら駅に入って来る。そのあこがれ感は僕の年代では記憶に鮮明で、今でも鉄道は好きだ。特にSLだ。
そのような感情を理屈抜きに歌にしたのが、カントリーミュージックだ。
鉄道の音や感じを楽器や声で表す。これもこのサウンドの特徴だ。
汽笛を声で真似るに始まり、ギター、ハーモニカ、フィドル、バンジョーなど楽器で、列車のいろいろな音にする、そして「シュシュ」と言うリズム感を出すなどだ。
とにかくそういう唄い方が皆、上手だ。
多くの有名歌手が列車を唄った。
ロイ・エイカフ(Roy Acuff)
ハンク・ウイリアムス(Hank Williams)
ジミー・ロジャース(Jimmy Rogers)
そしてジョニー・キャシュ(Jonny Cash)などだ。
知られた曲では、
The Old Log Train
Lonesome Whistle
Wabash Cannonball
Orange Blossom Special
Casey Jones
Rock Island Line
Wreck Of The Old 97
Mule Train
Night Train To Memphis などだ。

カントリー鉄道歌はフォークでは、それに無賃乗車するホーボー(Hobo)になった。

なかでもジョニー・キャシュ(Jonny Cash)の以下の2つの歌はとても流行った。
オレンジブロッサムスペシャル(Orange Blossom Special)はErvin T. Rouseと言う人の1938年の作で、フィドルのソロ曲だ。曲名は実際にフロリダとカルフォルニア間を走っていた旅客列車の名前。
フィドルで列車の感じを出すのがとても良い。キャッシュは1965年にこれを
歌詞で唄い、フィドルの部分をCとG,2個のハーモニカを使い自分で演奏した。上手い。

さらに僕の勝手なマーケティング論だが、列車の歌の背景には鉄道会社がいたと思う。
メキシコ鉄道が、オバーザウエブズ、ランチョグランテ、などのメキシコメロディを譜面にして配っていた通り、アメリカの鉄道各社もトレインソングズをCMとして使ったのではないか?事故の歌もあるが、おおよそそんなところだ。
じゃ、現在の移動手段、エアラインズはどうか、マーケティングの対象がカントリー音楽ではないのだろう。
歌詞にはアメリカ各地の地名も沢山出てくる。
ロッキー山脈を走るSL、これは映像を見るだけで納得する景色だ。

なお、列車は[SHE]であり女性だ。今となれば当たり前だ。社会的に力があり強いのは女性に決まっている。(この項以上)